生体肝移植

2019年度は、5例の生体肝移植目的の紹介がありました。3例がドナー肝容量不足、1例はまだ移植の必要はなく、1例は抗ドナー抗体強陽性で生体部分肝移植へ至る症例はありませんでした。
当科の肝移植は、1997年から開始し2019年1月現在、計66例となりました。1年生存率は83.0%、5年生存率は73.5%(図)と、成人生体部分肝移植全国平均生存率を上回っております。
原疾患の内訳は、肝細胞癌(n=15)、B型肝炎肝硬変(n=13)、劇症肝炎(n=10)、原発性胆汁性肝硬変(n=8)、 C型肝炎肝硬変(n=6)、アルコール性肝硬変(n=5)、原発性硬化性胆管炎(n=2)、自己免疫性肝炎(n=2)、胆道閉鎖症(n=2)、その他(n=3)となっています。

術後早期回復のため生体部分肝移植術にもERASを導入しております。
内容としましては、①外来で術前術後経過の説明。②リハビリテーション科による入院前リハビリテーション。③口腔外科による術前歯科検診。④術前からのBCAA、亜鉛投与。⑤術前シンバイオティクスの導入。⑥SVVによる術後管理。⑦術翌日からのリハビリテーション。⑧術翌日の抜管を行っております。導入後の11例では、生存率100%を維持しています。

現在、脳死肝移植施設認定に向けて症例を集積しております。脳死肝移植実施施設は全国25施設で、関東地方は、東京大学、慶応大学、自治医科大学、成育医療センター、順天堂大学、信州大学、東京女子医大の7施設で、神奈川県には認定施設はありません。
当院のみが、神奈川県下で成人の肝移植をおこなっており、横浜は全国一番の人口を有する政令指定都市であるという社会的背景から、当院でも脳死肝移植施設認定を目指しております。
脳死肝移植施設認定には症例の蓄積が必要であるため、関連病院から移植となるような急性・慢性の肝不全、Child C肝細胞癌症例のご紹介をお待ちしております。
(文責 肝胆膵グループ 熊本宜文)