原発性肝癌

肝細胞癌

我国では1989年から輸血用血液のC型肝炎のスクリーニング、住民を対象とした肝炎ウイルス検査を開始し、自覚症状のないHCVキャリアの拾い上げを積極的に行ってきた。さらに、C型慢性肝炎の治療に関しては直接作用型抗ウイルス薬の登場によりウイルス排除率は上昇してきている。
このため、C型肝炎持続感染に起因する肝細胞癌は全国的に減少傾向にあるが、非B非C型(NBNC)肝癌症例は増加傾向にある。
NBNC肝癌の多くは大量飲酒や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)由来であり、特にNASH由来の肝癌症例では、ウイルス性肝炎症例と比較すると肝機能は保たれているものの、定期経過観察がなされていないため腫瘍径が大きく約20%の症例で10cmを超えていた。 また併存症として糖尿病や虚血性心疾患の合併もウイルス性肝炎患者と比較すると有意に多く、周術期管理に注意が必要であった。

術前肝機能評価に関しては、アシアロSPECT/MDCT融合画像による分肝機能評価を行い、術前肝不全予測に応用している。
特に門脈塞栓術後は、体積変化以上に肝機能は非塞栓葉へ移行しており適応の拡大の可能性が示唆されている。

術後管理に関しては肝不全死予防のため、早期予測、早期介入を目指しており、術直後のT.Bil>1.5かつAT-III<50はISGLS定義の肝不全B,Cとなる危険群であり早期介入が必要と考えている。

1992年から2016年までの587例の切除例のうちR2切除を除外したStage別5年10年生存率はそれぞれ、StageI:83.6%、50.7%、StageII:71.7%、49.6%、StageIII:49.7%、34.3%、StageIVA:36.4%、17.7%であった。予後規定因子は、肝内転移陽性、Liver damage BC、AFP400以上、腫瘍個数4個以上、最大腫瘍径50mm以上であった。

基礎研究では、動物モデルを用いた肝再生、肝不全の病態解析並びに治療を継続しており、肝不全の新たなる治療を模索している。

熊本宜文