転移性肝癌

転移性肝癌 (文責;澤田雄 熊本宜文)

当科では、大腸癌肝転移に対して、1985年より2016年末で636例に初回肝切除を実施してきました。
2016年は初回肝切除27例、再肝切除5例の肝切除を施行し、非大腸癌症例を含めると、累計34例(福浦25例、浦舟9例)の肝切除を施行しました。
大腸癌肝転移初回肝切除症例の5年生存率は50.5%でした(図1)。
さらに、残肝再発症例に対しても、積極的な再肝切除療法を施行しており、100例(累計)の患者様に対し、切除を実施してきました。5年生存率は42.4%で、良好な成績を保っております。
現在の課題は、他院で、切除不可能と判断された肝転移症例に対し、化学療法・術式を組み合わせることで、切除を可能にすることと考えています。

1)両葉多発腫瘍(4個以上)
2)巨大腫瘍(≧8cm)
3)腫瘍脈管の浸潤している腫瘍
4)予定残肝が小さい場合
5)肝蔵以外に転移巣が存在する場合には、切除困難例と判定されることが多いですが、当院では、このような患者様に対し、臨床腫瘍科とも密に連携し、術前化学療法を実施することで、腫瘍の縮小後に、肝切除を実施する戦略をたてています(図2)。

さらに、切除後の予定残肝が小さい場合には、肝臓の再生能を利用して、門脈塞栓術併用切除を含めた多段階肝切除や、3D画像を利用した血管合併切除併用肝切除を実施しています。
また2017年より大学では肝臓内視鏡外科研究会の前向き登録参加施設であり、亜区域切除以上の肝切除も健康保険で施行可能となっております。
現在腹腔鏡下肝切除の適応は片葉分布としておりますが、腹腔鏡手術ご希望の患者様がいらっしゃった場合はご紹介のほどよろしくお願いいたします。
以上のような工夫をしながら、当科では、大腸がん肝転移の患者様に対し、最大限安全な手術療法を施行しており、さらに、臨床腫瘍科・大腸グループとも、連携しながら、診療をすすめております。また、大腸がん肝転移症例の他に、婦人科疾患、神経内分泌腫瘍、胃癌などからの肝転移の患者様に対しても、肝切除が有効な治療となる場合があり、このような場合には、積極的に切除療法を選択しています。

【図の説明】



転移性肝癌初回肝切除年次推移

図1 大腸癌肝転移初回肝切除後生存率



初回肝切除後生存率

図2 当科での大腸癌肝転移治療方針