炎症性腸疾患

2017年のセンター病院炎症性腸疾患(IBD)センターの総手術件数は103件でした(潰瘍性大腸炎初回手術41例、2期目再建手術9例、Crohn病34例、その他腸管Behcet病/単純性潰瘍、腸結核など)。
2000年からの潰瘍性大腸炎の累積手術例は464例、当科初回手術例は449例で、手術適応は難治292例(65%)、重症123例(27%)、癌、dysplasia34例(8%)、1期的手術は249(55%)、このうち腹腔鏡補助下手術(HALS)は135例(30%)(2007年以降は1期的手術の88%)、緊急手術は118例(26%)でした。
術後排便機能は経時的に回復し、術後1年における一日排便回数は7.7±3.0、漏便(soiling)は14%で、回腸嚢使用例の回腸嚢機能率は10年で98.2%でした。
2000年からのCrohn病の累積手術例は708例で、腸管病変に対する手術は617例、標準術式は小範囲切除、狭窄形成術で、131例(21%)を腹腔鏡補助下手術でおこないました。
肛門病変に対する手術は143例で、標準術式はseton法ですが、42例(29%)に人工肛門造設をおこないました。腸切除例における5年累積再手術率は12.6%、10年累積再手術率は34.0%でした。
術後生物製剤導入例で短期の再手術率は低下しましたが(3年再手術率、術後生物学的製剤投与あり:なし=4.3%:13.0%、p=0.029)、長期経過では差はなくなってきました(5年再手術率、投与あり:なし=10.4%:15.5%、n.s.)。
生物学的製剤は長期使用による二次無効(効果減弱)が問題となっており、今後登場しつつある抗TNFα製剤以外の生物学的製剤の治療効果が期待されます。
引き続き安全でQOLの高い手術をおこなっていきます。

木村 英明